令和7年度

国庫補助事業

1.伝承者の養成

1、新規採用者のための文化財修理研修会

◇研修人員 23名 (内2名は非準会員)(対象:新入社員~就業3年目程度)【外部保存団体参加者 0名】
◇研修期間 令和7年6月9日~6月11日(3日間)
◇研修内容 講 義 
 文化財修理現場で従事する技能者として欠かせない基礎知識を習得する新規採用者等を対
象とした座学研修。一日目は午前と午後で異なるプログラムを実施した。本研修は研修対象者が新入社員ということもあり、午前は導入として、社美協とはどのような団体なのか、どのような技術を持つ団体なのかについて、代表理事による説明を受けた。その後、各部門の担当理事によるそれぞれの技術について概要を学んだ。社美協は21社の正会員で構成されているが、その中で全部門を登録している正会員は僅か2社のみ。漆塗、彩色、錺金具等、部門に特化しているケースが多いため、同じ「建造物装飾」であっても、他部門の事を知る機会は多くはない。今回の研修においても「所属部門以外への理解が深まった」「興味深い話が聞けた」といった研修生の好意的な反応が見られた。
 午後は(公財)文化財建造物保存技術協会より増渕靖裕氏(群馬県…榛名神社設計監理担当)を講師にお迎えし、文化財保存修理の概要から活用までを解説いただいた。熊本県人吉市の「岩屋熊野座神社… 覆屋」(重要文化財)の事例より文化財の体系と指定基準を学んだ。また保存修理工事において工事にどのような人が関わっているのか、どのような流れで工事が進められていくのかを丁寧に講義いただいた。修理工事の詳細では見つかった史料や残存する部材の痕跡から、覆屋の復原を考え実際に修理工事を行っていく過程を当時の記録写真から学び、文化財の修理工事にこれから携わる者としての心得を深く考える研修となった。

2、文化財修理座学研修会

◇研修人員 30名 (対象:5部門所属准上級技能者)(他オンライン聴講者9名)【外部保存団体参加者 0名】
◇研修期間 令和8年1月31日
◇研修内容 講 義 
 准上級技能者を対象とした座学研修。令和4年度に発行された『技能者の資格制度と文化財修理事業における資格制度の活用』より、准上級技能者を対象に上級技能者の認定に向けて具体的にどのような能力や知識が求められるのか知見を高める研修会として開催された。
 本研修は代表理事の挨拶に始まり、午前は2名の外部講師をお招きし、それぞれのご専門から、上級技能者に求められる能力や考え方についてご講義いただいた。前半は(公財)文化財建造物保存技術協会より野尻孝明氏にご登壇いただき、施工管理面で社美協技能者に求めることとして「技術の向上と管理」「人材育成」「コミュニケーション」の3つの観点から具体例を交えた講義を拝聴した。後半は当協会相談役を務める豊城浩行氏にご登壇いただき、文化財修理に携わる者が知っておくべき事として、文化財保護の目的や文化財保護法についてお話しいただき、日本において文化財がどのように守られてきたのかを学んだ。各講師の講義より、技能者一人一人は文化財を将来に継承する者としての責任を再認識する機会となった。
パネラー発表の終了後は「漆、単色塗、錺・金具」部門と「彩色、剥落止め」部門に分かれ、午前午後の内容を受けてグループディスカッションを実施した。終了後、ディスカッション内容を記録者がまとめて報告を行った。各自現場で抱える共通の悩みや問題の共有の他、同じ部門の技能者同士の情報交換の場となった。研修の最後には、漆部門理事の長屋進氏より、上級技能者認定試験の概要と具体的な評価のポイントについて説明をいただいた。本研修は1日と短い開催日程ではあったが、受講後のレポートでも日頃から現場で情報共有をすることの大切さや、記録の重要性、コミュニケーションの大切さを改めて感じたといった声や、貴重な体験談に刺激を受け大変参考になった等の好意的な感想が多く、今後も継続して開催していくことを検討している。

2.技術・技能の練磨

1、固有技術向上研修会

「漆」「彩色」「剥落止め」「単色塗」「錺・金具」各専門分野の技術研修会の実施
◇研修人員 65名 (対象:初級技能者,中級技能者)
【漆部門11名,彩色部門24名,剥落止め部門11名,単色塗部門8名,錺・金具部門11名】
◇研修期間 令和7年5月~令和8年1月
◇研修内容 実 技 (一部座学も含まれる)
令和7年度は「認定制度」の枠組みのもと漆、彩色、剥落止め、単色塗、錺・金具部門の5部門において初級~中級の研修が実現した。本年は彩色部門の中級技能者研修では(公財)日光社寺文化財保存会様に技術講師として参与いただいた他、他部門においても各方面の専門家の皆様にお力添えいただいた。尚、5年目・10年目の研修に該当する準会員については「中級技能者」「准上級技能者」への昇級審査及び認定を行った。その結果今年度は計4名の「中級技能者」と、計5名の「准上級技能者」が新たに認定されている。
今年度より准上級技能者の研修が叶ったこともあり、より初級~上級までのステップアップが明確になる一方、本年度の研修実績を踏まえ、長期的な研修運営を実現するためにも引き続きカリキュラム内容の調整が各部門で求められており、今後も事業の運営と並行して実施していく予定。

3.記録の作成及び刊行

・研修報告書と会報「すいかずら第35号」の刊行、ホームページの更新、リニューアル版の準備などを進めた。

その他の事業

1.上級技能者認定審査

◇対象人数 4名 (対象:書類審査を通過した准上級技能者)
◇審査期間 令和7年4月~令和8年3月
令和7年度も上級技能者認定審査が行われ、書類審査を通過した4名の現地審査が行われた。
現地審査終了後、理事会をもって対象者全員の合否が確定し、令和7年度は計4名の技能者が新たに「上級技能者」として認定された。

2.文化庁選定保存技術広報事業「日本の技フェア」への参加

◇開催期間 令和7年11月22日(土)~23日(日)(2日間)
◇開催場所 サンドーム福井 メインホール(越前市)
◇来場者数 3,305人(2日間合計)
今年度は福井県越前市にて「日本の技フェア」が開催された。今回は正会員1社に協力いただき、ブース出展と展示品解説を行った。今回は彩色の模型を持ち込んだこともあり、普段は見上げて見える彩色を間近で見ていただける機会となった。解説では当協会の漆部門担当理事にご協力いただけたこともあり、技術的な内容はもちろんのこと、協会の紹介等も持ち込んだリーフレットが無くなるほど積極的に行ってくださった。br また本年も期間中11月22日に同会場にて「文化財建造物修理関係団体と学校関係団との意見交換会」が文化庁主催でおこなわれ、県の学校関係者と選定保存技術認定団体間で情報共有を行った。
意見交換会では赤池誠章前参議院議員が来賓として臨席され、学校関係者と保存団体間で若年層の入職状況や就職について情報共有が行われた。

3.「文化財建造物保存技術資料集 積算資料編 令和8年度版【建造物装飾】」の更新

当協会が加盟する一般社団法人 文化財修理技術保存連盟(以下、文技連)より令和8年度版の積算資料集が令和7年11月7日付で発行され、社美協でも「建造物装飾」の積算資料の金額を更新している。本年度は「金」の価格変動に業界が振り回された一年だった。社美協では置上・漆箔・水銀鍍金等、金箔を使用する技術が多く、金の価格変動は大きく影響を受ける。積算資料集が毎年発行となったことで、今回の価格変動を踏まえた調整ができるようになったことは大きい。依然として会員の負担は大きいが、長期的には必要な活動であることをご理解いただき、関係各所と連携しながら、より使いやすい積算資料を作成していきたい。