建造物の柱や梁、壁に施されている文様や絵画を建造物彩色と呼びます。
日本において建造物に彩色が施され始めたのは、仏教伝来以降のことです。木造の社寺建造物に彩色を施す目的は、宗教的な装飾表現として建物を華麗に飾ることと木部を保護することです。建物の持つ意味や様式を表現するために、彩色では日本画絵具や金を用いて文様や絵を施します。建物内部に施された彩色は平安時代創建の平等院鳳凰堂に見られるように1000年近く絵具が残る場合もありますが、外部に施された彩色は風雨にさらされるため早く劣化します。そのため古い建物では何度も彩色修理が施されていることが多くみられます。
彩色の修復方法には、剥落止め、補彩、図様の復原など様々な方法があります。創建当初の図様に復原する場合は、建物に描かれた彩色の詳細な調査が重要です。その結果に基づいた技法・素材・原図の検討を経ることにより当初の姿が蘇ります。修復の方法は対象の状況によっても変わりますが、施主の意向、文化財保護の観点から最良の方法を考えていきます。