- 活動報告 令和6年度
- 【国庫補助事業】
- 伝承者の養成
- 技術・技能の練磨
- 記録の作成及び刊行
- 【その他の事業】
- 上級技能者認定審査の実施
- 文化庁選定保存技術広報事業「日本の技フェア」への参加
- 「文化財建造物保存技術資料集 積算資料編 令和7年度版【建造物装飾】」の更新
令和6年度、一般社団法人 社寺建造物美術保存技術協会では以下のような活動を行いました。
【国庫補助事業】
1.伝承者の養成
新規採用者のための文化財修理研修会
◇研修人員 16名 (対象:新入社員~就業3年目程度)【外部保存団体参加者 0名】
◇研修期間 令和6年7月1日~3日(3日間)
◇研修内容 講 義
本研修会では、新規採用者等に対して文化財修理現場で従事する技術者として欠かせない基礎知識を学ぶ研修を行った。
一日目は昨年に引き続き(公財)文化財建造物保存技術協会 の増渕靖裕氏(群馬県
榛名神社設計監理担当)を講師にお迎えし、文化財保存修理の概要から活用までを、文化財建造物の体系や保存修理工事の流れを押さえながら分かりやすく解説いただいた。また、記録写真の撮影時のポイント等も説明いただいたことで一つ一つの作業に意味があり、受け継がれる歴史的建造物に対して技能者が施工時に考えるべき点をしっかり学習することができた。二日目は、労働災害を起こさず心身共に健康で安全に業務にあたるための知識や法令を(一財)中小建設業特別教育協会
友永義久氏の解説のもと学習した。今回も「じん肺」の健康被害やリスクについて取り上げていただき、長く健康に活躍するために大切な視点を学習することが出来た。三日目は「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」を実施した。社美協では数年ぶりの開催となり、新規準会員以外の他、希望受講者含め合計39名が受講した。文化財を修理するための「道具」だけでなく、職人自身を守る「道具」もまたメンテナンスや正しい使用方法をしっかり学ぶことの大切さを実感する研修会であった。
文化財修理共通座学研修会
◇研修人員 50名 (対象:5部門所属準会員)【外部保存団体参加者 0名】
◇研修期間 令和7年3月3日
◇研修内容 講 義
本研修会では、文化財建造物装飾に関わる技術者にとって、共通する素材を取り上げ集中的に学習する研修を行った。(独)国立文化財機構 東京文化財研究所より早川典子氏(保存科学センター副センター長)を講師にお迎えし、素材の組成や構造について図を用いてわかりやすく解説いただいた。また文化財修理において重要な材料生産の現状に関するお話に危機感を感じた受講者もおり、協会としても文化財修理という仕事をより広く長い目で見るきっかけになってほしいと切に願う。現地参加とリモート参加のハイブリッド形式にて開催したことで、全部門より多くの技能者が受講することができた研修会となった。



2.技術・技能の練磨
固有技術向上研修会
「漆」「彩色」「剥落止め」「単色塗」「錺・金具」各専門分野の技術研修会の実施
◇研修人員 104名 (対象:初級技能者,中級技能者)
【漆部門32名,彩色部門16名,剥落止め部門13名,単色塗部門7名,錺・金具部門36名】
◇研修期間 令和6年7月~令和7年3月
◇研修内容 実 技 (一部座学も含まれる)
令和6年度は「認定制度」の枠組みのもと漆、彩色、剥落止め、単色塗、錺・金具部門の5部門において研修が実現した。漆部門の初級技能者研修では(公財)日光社寺文化財保存会に技術講師として参与いただいた。他部門や中級技能者の研修においても各方面(文化庁・研究機関・教育機関・民間企業等)の専門家の皆様にお力添えいただいた。尚、5年目・10年目の研修に該当する準会員についてはそれぞれ「中級技能者」「准上級技能者」への昇級審査及び認定を行った。その結果今年度は計6名の「中級技能者」と、計1名の「准上級技能者」が新たに認定されている。
今年度は中級技能者に向けて漆、彩色、単色塗、錺・金具の4部門において研修実施が叶い、昨年度よりもさらに研修範囲が拡充した。研修範囲の拡充により、より多くの準会員が受講機会を得る事ができたことで、受講者からはもっと学びたいという嬉しい声もいただいた。
日々の現場作業で得られる学びに、研修を通して得られる学びが良い相乗効果を与えられるよう、研修形式を柔軟に整えていく必要性を感じた年度となった。









3. 記録の作成及び刊行
研修報告書と会報「すいかずら第34号」の刊行、ホームページの更新などを進めた。
【その他の事業】
1.上級技能者認定審査
◇対象人数 2名 (対象:書類審査を通過した准上級技能者)
◇審査期間 令和6年4月~令和7年3月
令和6年度も上級技能者認定審査が行われ、書類審査を通過した2名の現地審査が行われた。
現地審査終了後、理事会をもって対象者全員の合否が確定し、令和6年度は計2名の技能者が新たに「上級技能者」として認定された。
2.文化庁選定保存技術広報事業「日本の技フェア」への参加
◇開催期間 令和6年11月2日(土)~3日(日)(2日間)
◇開催場所 夢メッセみやぎ本館展示棟展示ホールA(仙台市)
◇来場者数 1,124人(2日間合計)
今年度は宮城県仙台市にて「日本の技フェア」が開催された。今回は正会員1社に協力いただき、ブース出展と展示品解説を行った。解説では彩色部門より若手の職人1名に協力いただき、日頃の現場作業の様子や現場先でのエピソード等を来場者にお話しいただいた。来場者の中にはありがたいことに建造物装飾業界に興味を持ってくださる学生の方も来場され、業界の担い手不足が叫ばれる昨今、いざ職人になったらどのような仕事をするのか…直接職人に尋ねる機会を提供できたのは非常に良かった。
期間中11月2日には同じく夢メッセみやぎにて「選定保存技術関係団体と学校関係団との意見交換会」が文化庁主催でおこなわれ、県の学校関係者と選定保存技術認定団体間で情報共有を行いました。昨今の学生が就職先を決める際に何を重要視しているのかを、直接声を聞いている関係者の方より伺うことができ、業界として積極的に行っていきたい求人活動に向けて非常にプラスとなった。

3.「文化財建造物保存技術資料集 積算資料編 令和7年度版【建造物装飾】」の更新
当協会が加盟する一般社団法人 文化財修理技術保存連盟(以下、文技連)より令和7年度版の積算資料集が令和6年11月26日付で発行され、社美協でも「建造物装飾」の積算資料の金額を更新している。昨今の急激な物価高や材料の生産量減少等、文化財建造物修理を取り巻く状況は常に変化しており、そのスピードも速まっている。適切な仕事量と請負価格で業界の地盤を安定させるために、この変化に迅速に対応することが求められており、以降は年に一回のペースで更新、発行していく方針となっている。