平成26年度、一般社団法人 社寺建造物美術保存技術協会では以下のような研修を行いました。
1.伝承者の育成
1、建造物装飾修理用資材検討調査研修会
建造物装飾修理用資材検討調査研修会では、漆産地の茨城県久慈郡大子町を訪れました。大子町農林課、NPO法人麗潤館、日本文化財漆協会、大子漆保存会、大子町漆掻き職人等、漆に関係する方々に大子町の漆に関する取組みを伺うと共に、漆の現状、今後の課題等、意見交換を行いました。また、漆に関する施設訪問や漆畑の見学をしました。
研修期間:平成26年9月21日(日)
2、会員研修
建造物修理用資材検討調査研修会と同時開催し、平成の大修理の始まっている日光市輪王寺及び日光東照宮の修理現場の見学を行いました。輪王寺本堂(三仏堂)では、公益財団法人日光社寺文化財保存会の方々に解説いただくと共に、大規模な虫害駆除や木部修理の方法を見学しました。また、日光東照宮の陽明門では、完成直後の彩色部分と現状の嵌板の下から出てきた当初の桐油蒔絵の様子とその剥落止めの現場を見学しました。
研修期間:平成26年9月20日(土)
3、後継者育成実技研修
各種美術・工芸教育機関と連携し、文化財建造物装飾に関心のある後継者を各事務所に受け入れ研修を行い、将来の後継者育成に繋げる取り組みを行いました。今年度は(株)さわの道玄、(株)小西美術工藝社が受け入れ事務所となり、研修生に実際の仕事を体験してもらいました。
①(株)さわの道玄での研修
研修期間:平成26年9月1日(月)~12日(金) (計10日間)
研修生:1名
②(株)小西美術工藝社
研修期間:平成26年9月24日(木)~10月4日(土) (計10日間)
研修生:1名
2.技術・技能の錬磨
1、建造物装飾模型製作研修会(平成22年度~)
建造物装飾模型製作研修は、22年度から5年間をかけて、漆塗り・彩色・丹塗り・金具の4部門でひとつの模型を完成させる取り組みで、本年度は最終年度でした。各研修を終え、無事に模型が完成いたしました。
研修期間:①チャン塗り(手板製作)
平成26年5月
研修期間:②金具(検討委員会、原図製作、金具製作、手板製作)
平成26年6~12月
研修期間:③単色塗り(模型製作) *胡粉、黄土、丹、丹土、弁柄、墨
平成26年10月6~10日
研修期間:④桐油彩色Ⅰ期(模型製作、手板製作)
平成26年10月14~17日
研修期間:⑤桐油彩色Ⅱ期(手板製作、桐油炊き)
平成26年10月18日、20日
2、 建造物装飾模型製作完了報告会
模型完成に際し、「建造物装飾模型完成完了報告会」を開催し、この5年間の歩みを総括しました。
日時:平成26年10月21日
会場:京都市文化財建造物保存技術センター
プログラム:
①開会の挨拶(一般社団法人 社寺建造物美術保存技術協会会長 荒木かおり)
②「模型製作 各技術について総括」(一般社団法人 社寺建造物美術保存技術協会技術顧問 窪寺茂)
③研修生の所感
④「研修事業についての全体総括」
(文化庁文化財参事官[建造物担当]付文化財調査官 岡本公秀)
⑤「床の間の発展と日本文化(文化財建造物の意義について)」
(一般社団法人 社寺建造物美術保存技術協会顧問 江面嗣人)
⑥閉会の挨拶(一般社団法人 社寺建造物美術保存技術協会副会長 澤野道玄)
3.記録の作成及び刊行
平成26年度に行ってきた研修の様子を写真や動画で記録し、アーカイブとしました。平成26年度の研修の様子を『平成26年度 社寺建造物装飾技術者研修会報告書』として編纂し、刊行いたしました。
また、これまでの建造物装飾修理用資材検討調査研修会の成果をまとめた『文化財建造物修理資材を考える-「漆」』を刊行いたしました。