鳥居でおなじみの朱色を建造物装飾の言葉では丹塗り(にぬり)といいます。
丹塗りとは昔ながらの材料を使った伝統的な塗装方法の一つです。伝統的な社寺が赤く塗られてきたのは、建物を彩ることで魔除けや神性を表す視覚的な意味のほかに、朱や丹という顔料は金属を原料としているので、虫害・腐食から建物自身を守る役割もあります。
丹塗りの工程は、最初に古い塗装をへら等の道具によって丁寧に削り、汚れや埃を拭き取る掻き落し作業を行います。次に礬砂(どうさ)と呼ばれる、膠水に明礬(みょうばん)を溶かした液を塗布します。さらに、砥之粉(とのこ)・おがくず・漆で練った刻苧(こくそ)を傷んだ部分や虫食いの穴に充填して埋め、均一な木地を再生します。そして最後に鉛丹(えんたん)の粉を膠水で溶いた丹で塗り上げます。
伝統的な丹塗りは、現代の塗装に比べ何倍もの手間暇がかかりますが、本来あるべき姿に修復するためには必要なことです。鮮やかな丹・朱色、そして丹塗りという伝統技術を次の世代へと伝え残していかなければなりません。
- [ 膠 ]動物の皮から抽出した接着剤
- [明 礬]硫酸塩とアルミニウム・クロム・鉄などが化合したもの
- [砥之粉]風化した岩石を粉末に加工したもの
- [鉛 丹]金属鉛を加熱し酸化させて作る赤色の顔料